ドラムという楽器を理解する

ドラムを演奏する前に、まずはドラム自体を理解することが大切です。それはドラムの各部の名称はもちろん、アンサンブルの中での「立ち位置」、そして「意味」を理解することが大切なのです。

まずはドラムの各部分の基本的な名称からです。これはアンサンブルの際やライブハウスなどで演奏する際、つまり「人とドラムに関して話すとき」に必ず必要になるものですので、覚えておくのは必要です。そんなに難しいものではありませんし、数も限られています。

まずは足でペダルを踏み、一番低い音を出す大きなドラムが「バスドラム」です。これはPAやレコーディングエンジニアなど、音響に関わる人から「キック」と呼ばれることもあります。バスドラムを鳴らすためのペダルを踏むと、「ビーター」と呼ばれるものが打面に当たり、「ドン」という迫力のある音を出します。この音はドラム演奏の「要」であり、リズムのメリハリを作るためのものです。

そして主に左手で叩くものが「スネアドラム」です。これは小学校などでは「小太鼓」と呼ばれることもありました。底面に「スナッピー」といわれる金属のジャラジャラしたワイヤーを備えていて、これが他のドラムとは違う特徴的な音を出します。打面を叩くことで底面に振動が伝わり、スナッピーを振動させます。この振動により「パン」だとか「スタン」というような独特の音を出します。

バスドラム、スネアと続いて一番多く使用するのが主に左足でペダルを踏み、その「開き具合」を調節する「ハイハット」です。これはシンバルで、右手で叩くことが多いです。ハイハットは二枚のシンバルが貝のように重なっていて、叩いた瞬間にそれが擦れ合い、独特の音を出します。ハイハットを閉じる時はペダルを踏みます。開くときはペダルにかける左足を少し浮かせるか、ペダルから足を離すことになります。

バスドラム、スネア、ハイハットはドラム演奏の基本です。右腕は左腕の上に位置するようにし、両腕は超度クロスするようなフォームが基本です。この際、ハイハットとスネアの「高さ」を演奏しやすいように調節することが大切ですか、ハイハットを高くするとスティックはハイハットに対して横からアタックすることになり、「ジャッ」という激しい音が出ます。逆にハイハットを低くするとスティックが上からヒットするので、「チッ」という軽い音が出ます。演奏する音楽のタイプによっても、セッティングは左右されるでしょう。

残るドラムのパーツの中で、「太鼓」のカタチをしているものは「タム」と呼ばれます。直接床に設置する大きなタムを「フロアタム」といい、バスドラムにマウントするようなタイプのものを「タム」または「タムタム」といいます。タムタムは通常バスドラムに2つマウントされていることが多いのですが、このうち大きいものを「ロータム」、小さいものを「ハイタム」と呼ぶことが多いです。この「タム」の点数、またセッティングは、人によって異なります。人によってはハイタムをオミットした「3点セット」といわれるセッティングを好む人もいます。タムは演奏にメリハリをつけたり、フィルインと呼ばれるフレーズで用いられたりする部分です。

スタジオやライブハウスでは上記に加えて三枚のシンバルがデフォルトセッティングされていることが多いです。そのうち高い位置、左右にセッティングされているものが「クラッシュ」です。口径や仕上げで音色が異なる二枚のクラッシュがセッティングされていることがほとんどです。クラッシュシンバルはスティックをシンバルに対して横からヒットさせることでより大きな音を出せます。ただ、スティックはその度に損耗します。

残るシンバルは「ライド」と呼ばれるシンバルです。これは「面」を打つことが多いシンバルで、ハイハット同様リズムを刻むことが多いシンバルです。ドラムセットによっては、二枚目のクラッシュをオミットしてライドが兼ねていることがあります。位置としてはフロアタムの横が多いのですが、ハイタムやロータムをオミットした3点セットではバスドラムの上の部分にセッティングされることもあります。クラッシュのように演奏するためには、スティックをシンバルに対して横からヒットさせると独特の音を出します。

これがドラムの各部分です。人によってセッティングは変わりますが、一般的なドラムセットのすべてになります。これらを一人の演奏者が叩くことで、ドラム演奏が成立します。「音階」ではなく、「リズム」を刻むということ、アンサンブルのなかで常に「リズム」は存在しているということを理解し、全体を牽引するつもりで演奏することが大切です。