耳を守るためには

ドラムの音というものは大きいものです。その大きな音にもっとも晒されるのはそれを叩いているドラマー自身です。ドラマーにとってその「音」に対する対策は死活問題ともいえます。

生のドラムの音が好きだということはわかります。自分の出している生の演奏の音を楽しみながら演奏したいという気持ちはわかります。ですが、パワーヒッターであればあるほど、その分だけ耳に負担がかかるものです。大きな音をずっと聴き続けるとやがて耳が傷んでしまうのは、人間ではあれば避けられないことです。

「大きな音には馴れた、自分にとってはうるさくない」という場合は、その時点で耳が傷んでいるということです。「難聴」という言葉をご存知でしょうか。大きな音を聴きすぎて耳が傷んでしまった結果の症状です。「音が聴こえ辛い」ということです。それは音楽をやっている時、大音量で音楽を聴いている時はべつに問題ないのかもしれませんが、やがて日常生活で支障をきたすようになるものです。

音楽を長く愛したいからこそ、音楽に長く付き合いたいからこそ、自分の「耳」を守るということが大切です。自分の耳を守るということは「自分自身」にしかできないことです。自分が自分の耳を守ってあげなければ、誰も守ってくれないのです。楽器の種類は数多くあります。その演奏者もたくさんいます。その中でも、「ドラマー」はもっとも自分の「耳」に対して神経を使うべき位置に存在する人です。

世の中の音楽はすべてが鼓膜を震わす大音量ではないのです。すべてが空気を震わせ、人の胃を振動させるものではないのです。そこには繊細な表現を多用したものもあり、繊細なニュアンスをはらんだものもあります。すべての音楽をすべて堪能するためには、耳を健全に保つ必要があります。

特に、現在では「ポータブルミュージックプレーヤー」を使って音楽を聴くことが当たり前になっている時代です。それらは鼓膜のより近いところに音の発信源を位置させ周囲に音が漏れないようにしながら自分だけで音楽を楽しめるようにしたものです。それ自体は技術の進歩と日本独特の「マナー」に準じたものであるので否定はしません。ですが、それによって周囲に音を漏らさずに大音量で音楽を聴くことが常態化しているのです。それによって発生したのは「難聴」の人が続出したということでした。

音楽を好きだからいつも音楽を聴いている。そして音楽をより楽しむために大音量で聴いている。そのような人が増えたため、「難聴」に誰もが悩む時代が来てしまったのです。それが「普通」であると考えるのか、「音楽に携わるから耳を大切にしたい」のか、考える必要があります。

スタジオで、頻繁に大音量で練習する人はミュージシャン用の音量軽減の耳栓もあります。そのようなものを利用して自分の耳に対して適切なボリュームでのヒアリングを実現することが大切です。自分の耳は自分しか守れない、そして耳が聴こえなければ音楽の微妙なニュアンスを表現することはできないのです。

音楽に関わるということは、自分の耳を武器にするということです。音楽はますます大音量、大音圧の時代に突入しています。そのような時代に、いかにして自分の耳を大切にしていくかということを考えていきたいものです。