楽器をはじめたいと思うときには何かキッカケがあるものです。今、まさに「ドラム」という楽器に対して興味を持ち、チャレンジしてみようと考えている人であれば、その「今」が可能性を大きく広げるための第一歩であると理解していただきたいものです。

楽器の習得には長い時間を要します。さらに、「ここからここまで」で習得が「終わる」というものではありません。「見習い」と「プレーヤー」の垣根も、ありません。楽器を奏でるすべての人が演奏者であり、音楽を構成するひとつの要素として、音楽に関わるひとりのミュージシャンとして、音楽に対する責任と、聴く人に対する責任を抱えることになるのです。特に「ドラム」はシビアな楽器であるといってもいいでしょう。アンサンブルの「根幹」であり、「リズム」、「テンポ」を司る中心的な存在です。ドラムという楽器をマスターするためには、テンポに対する理解、そして音符に対する理解が必要不可欠です。

ドラムは他の楽器と違い、自宅で練習するということが難しい楽器でもあります。楽器をマスターするためには「練習」が不可欠ですが、ドラムに限っては「練習できる場」が限られています。現代のポピュラー楽器のほとんどは通電しているもの、つまりエレキ楽器です。スピーカーから奏でられることが普通になっていて、自宅での練習もしやすいものです。ですが、ドラムは「生楽器」です。しかも、「叩く」という行為の結果音を発するものであり、その音量、音圧はエレキ楽器のアンサンブルの中でも「生」の音だけでも埋もれないほどのパワーを持っています。そのような楽器を軽々しく自宅で演奏する環境は、残念ながら現代の住宅事情ではなかなか許されないものです。

そのような「環境」をクリアするのも、地道な練習を続けるためにも、ドラムを好きになるということは大切です。その楽器を演奏することが「当たり前」になる感覚が必要なのです。楽器の習得に終着点はありません。人の手による「演奏」というものは時間と共に変化ししていくものです。「ここまで覚えたらもういいだろう」という「限り」がないものです。その道は果てしなく、死ぬまで、その楽器が演奏できなくなるまで、ずっとその楽器と共に身も心も存在するような状態になります。

そのような「楽器の道」、「ドラムの道」を歩み続けるためには、ドラムが好きでないといけません。演奏することが楽しい、新しい演奏方法、それまで自分ができなかったテクニックなどを追求することに「楽しみ」を持つことが必要です。そして楽器の演奏は重奏されて「音楽」になります。根本には音楽に対する親しみ、音楽を愛する心が必要なのです。その結果、「練習」という意識がなくなるのです。ドラムを叩くことが楽しいから、その音楽の一部分になるのが楽しいから、ずっと演奏を続けるものなのです。そして、やがて、自然と上達している自分に気がつくのです。焦ってはいけませんし、投げ出しても意味がありません。そして演奏技術は人によって異なりますし、特にドラムは人による「差」というものが顕著です。自分にしか出来ない演奏、自分にしか出せないグルーブがあるのです。それを追求するためにも、まずはドラムを好きになること、それが大切なのです。