音符の長さの理解

すべの音楽は「時間」と共にあります。その時間を「どう割るか」ということがテンポです。テンポというものは「四分音符」という基本的な音符の長さを決めることです。

ドラムという楽器の特性上、どうしても音符の長さよりも、叩く「タイミング」に意識が移りがちです。それは「点」での演奏であり、音楽上はあまりよくない考え方です。これがギターやベース、さらには鍵盤や金管楽器などであれば、必ず音を「止める」ということを意識するものです。音楽には「長さ」があるからです。ドラムという楽器はどうしてもその特性上「打つ」、「音を鳴らす」ということに特化しがちで、「音を止める」という点に意識が向かないのです。

ですが、「ドラムには音符の長さはないのか」というとそういうわけではありません。音の長さを調節できるパートとして「ハイハット」があります。ハイハットはペダルでその開放具合を調節する部分です。音を出し、それを「止める」ということは、ドラムの演奏においても自然に行われることなのです。ハイハットだけではありません。クラッシュシンバルでも任意の長さで発音を止めるということは行われます。それは振動しているシンバルを手で止めるということですが、これもごく一般的なテクニックです。

ドラマーだからこそ、「音符の長さ」というものを意識する必要があります。その他の楽器では音を止めなければ音が鳴りっぱなしになってしまいます。また、弦楽器などでは物理的に音が止まらないと次の発音ができないようになっているものです。ですがドラムは叩けば音が出るというシンプルなものであり、そのシンプルさから音楽的な要素、音符の長さ、音階に関することに意識がいかなくなっている場合もあるでしょう。

アンサンブルの中でももっとも音楽的であるのはドラムであるべきなのです。それはドラムが「音楽の時間の速さ」を決定する、音楽の根幹の部分を支配する楽器だからです。叩けば音は出ます。スティックを変えたり、スネアを変えたり、セッティングを変えることでさまざまなオリジナリティ溢れる演奏ができます。ですが、この「根幹」の部分だけは変わることがありません。どのドラマーにとっても変わりません。

テンポを意識し、それをキープし、さらには音符の長さ、休符も意識すること。それがドラマーに欠けがちなスキルなのですが、それを理解して実践できるドラマーこそ、アンサンブルの主軸となり得るドラマーです。打楽器だからこそ、音符の長さを意識すること、ひとつの小節がどのように区切られているのかということを知ること、それが大切です。

音符の長さを意識することで「点の演奏」から解放されます。「叩くため」の動きの中に音楽が産まれるようになります。音符を理解して叩くことで、より自然でアンサンブルに馴染んだプレイが実現されることになります。ただ速ければいいというわけではありません。ただ音が大きければいいというわけではありません。自分が叩いている時間軸の中に、自分の動きの中に、同じアンサンブルのさまざまな音色、フレーズが生きているのです。それを意識すること、動きすらも音楽に昇華させること、それがドラマーとして開眼するための第一歩になるでしょう。