アンサンブルの中のドラム

生楽器を持ち寄り、それぞれが自分のパートを演奏すること、またその結果生み出された音楽のことを「アンサンブル」といいます。各自が各自のパートを完遂し、またそれぞれのパートが干渉しあい、アンサンブルは成立しています。

特に生演奏においては、そのタイムラインをどのようにキープするのかということが最も重要です。そのタイムラインをどのようにキープして、そのタイムラインをどう刻むのか、どう彩るのかということがアンサンブルの究極です。その中で「ドラム」は、そのアンサンブルの「時間軸」を決定する重要な役割を担っています。一般的なエイトビート、バスドラムを鳴らしてからスネアドラムを鳴らすまでの長さは四分音符ひとつ分の長さです。つまり、バスドラムとスネアドラムの間の長さ、またその間に鳴る八分音符で刻むハイハットの音の間隔自体で、その音楽の「時間」を決めているのです。

その音楽の「時間」はテンポのことですが、実はその「音と音のインターバル」はただテンポを規定するだけではなく、その場の「グルーブ」も左右するものなのです。考えて見ると、ドラムのフレーズはそのインターバルの積み重ねです。インターバルはそのまま音符の長さです。ひとつのアンサンブルの中ですべてのパートのすべてのフレーズが重なるのです。音符の長さを規定しているのもまた、ドラムというパートなのです。時間軸をリズムで分割し、そこにさまざまな音色のさまざまなフレーズが重なり、ひとつの音楽になっていく。それがアンサンブルです。

音楽的に分解していくと、ドラム以外のパートでは重奏することによる音の調和を意識することになります。そのキーから外れた不協和音はないか、リズムから脱落した音はいないかどうかを意識することになります。その中でも重要なのは「音のバランス」です。

音のバランスといっても内容は多岐に渡ります。まずは音量、それは各パートの音量が最適かどうかということです。そのパートの音量のバランスは、エレキ楽器であればある程度は調節することができるものです。ですが、その中でも「ドラム」は生楽器であるため、時には「自分の音をしっかりモニターしたい」という各パートの演奏に埋もれてしまうこともあるのです。そのようなときには「なぜ聴きにくいのか」ということを考える必要があります。

その代表的なものとして「音の帯域の重複」が考えられます。各パートの音がうまく分離ししていないため、聴き取りにくいというわけです。その結果ボリュームを上げてしまい、音が聞こえ辛くなるというものです。その結果アンサンブルは大きくなりすぎた上に帯域が重なっている音のせいで破綻してしまいます。聴けたものではありません。

音量をそこまで上げなくても聴きやすくなるはずだということをまず念頭に入れておきたいものです。各パートがうまく分離し、それでいて調和すること。それを心がけない限りアンサンブルは成立しません。モニタリングしにくい原因は音量にあるのではなく、「音色」にあるということを理解しましょう。それが実感できたとき、アンサンブルの中で鳴っているすべての音がその存在を確立することができるようになるのです。