クリックをしっかりモニタリングするためには

クリックをしっかりとモニタリングするために必要なことは、「クリックの音が聴こえるような工夫をする」ということです。それは容易なことではなく、ドラムの大きな音を一番よく聴いているのはドラマーです。その音量にクリックが負けないようにしなければいけません。

いつも叩いているから気が付きにくいものですが、ドラムの音というのは爆音です。それを実感するため、堪能するための特等席が、ドラマーが座っている位置です。もっともドラムに近い場所だからです。その場所でクリックをしっかりとモニタリングするためには相応の工夫が必要で、ただクリックのボリュームを上げるだけでは耳がおかしくなってしまうのです。

第一に工夫したいのが「クリックの音色」です。これをドラムの各音域とは違うもの、さらにはアンサンブルの中のどの音とも被らない設定にすることが必要です。このことで「ボリューム」とは関係なく音抜けが良いクリックをする得られることになります。ただ、クリック自体の音色を設定することができるメトロノームはあまりありません。何種類かあるクリックの中から、自分に適したものを選ぶしかありません。これはどのようなスタイル、どのような機器でクリックを聴くのかということにも関わる問題です。

次に元々のドラム演奏の音、周囲のアンサンブルの音を減衰させるということも大切です。それは実際に発生している音を抑えるのではなく、モニタリング上音を減衰させることが必要だということです。それを行うのは自分の「耳」の部分です。つまり、自分のクリックを聴くためにイヤホンやヘッドホンをしているはずなので、その部分で周囲の音を削るということになります。

上記の「音色」と「音のカット」は通常同時に行うことでもあります。それらのすべては「モニタリングするための耳元」、「メトロノーム本体」に依存するものであり、人によって適切な環境に差があるでしょう。ただ、「周囲の音に負けないようにクリックを大きな音にする」という場合、そのクリックの音が「周囲に漏れてしまっているのではないか」ということを考える必要があります。クリックが外に漏れてしまっていると、その音がマイクなどに拾われ、演奏直前のカウント部分だけであるにしても、お客さんに聴こえてしまうこともあります。

つまり、「ただクリックが聴こえたらいい」というわけにはいかないということです。クリックが確実に自分に聴こえること、そしてそのクリックの音が外に漏れないことを同時に実現する必要があるのです。このためにはやはり、「周囲の音を減衰させる工夫」が必要です。最近よく見られる「カナル式のイヤホン」、つまり耳栓のようなイヤホンを装着すると、それは実現できます。ただ、それでは「音質」が大きく変わってしまうことになります。それでも良いという人は問題ないのですが、一番大きく変わるのは自分のスネアの音です。スナッピーの反響が聴こえなくなることが多いのです。自分が叩いて出しているはずの音を、自分で聴くことができないということが難点で、それをクリアする必要があります。

ただ、この部分に関しては、一番大切なのは「人にどのように届いているか」ということであって、自分に対しては最低限のフィードバックさえあれば良いという考え方もできます。